抵抗タイプ高速タップ切換器の発明

1831年8月29日、Michael Faradayは複数の巻線を持つ磁気閉回路を用いた実験中に、全ての発電機や変圧器の原理となる、磁気誘導を発見しました。彼は、導体の近くを磁界が移動する時、導体内に電流が発生することを発見しました。この発見は全く新しい発電方法を切り開きました。

この発見に続く最初の開発は、誘導コイルでした。最初に本物の変圧器が開発されたのは、1883年にLucien GaulardとJosiah Willard Gibbsによって「二次発電機」が発表された時でした。この開発では、巻線間のスイッチに加え、誘導コイルの鉄心をスライドさせることによって、既に電圧の制御を実現していました。その後の数年の間は、「コンバータ」や「電圧インダクタ」などと呼ばれることになる機器の開発が加熱しました。「変圧器(Transformer)」という言葉は、1885年に特許申請にて初めて使われ、急速に広まり、今日も使われています。

もう一つの印象的な出来事は、AEGのMichael v. Dolivo-Dobrowolskyが申請した三相変圧器について、1889年に最初の特許が認められたことです。そのたった1年後には、Brown Boveri & Cieの共同創業者であるCharles Brownが、大気中の水分を遮断し優れた絶縁特性を達成するために、油浸形の変圧器を製作します。循環する油が優れた放熱手段となりうることは、その後、全く偶然によって発見されました。変圧器は他の機器に勝利し、普及していきました。1891年8月25日には、三相15kVにて、100kWの電力がLauffenからFrankfurt間の175kmをマイン川に沿って送られました。この時に既に電力効率は76%もありました。

初期の変圧比が固定の変圧器についてすぐに明らかになったのは、実際にその値通りの電圧となることは非常に稀で、実際の変換比が変更できることが望ましいということでした。一般的に、変換比の変更の方法は以下の二通りがあります。

  • 誘導と磁気回路の調整
  • 選択的に切り替えることができる巻線もしくは巻線部分

これらの双方の技術的な原理に対して、19世紀中から同量の調査の努力がなされ、多くの特許のテーマとなりました。

当初、タップ付きの変圧器は、タップの接続が技術的に非常に難しかったこともあり、二つの選択肢の中では、より望ましくないものと見られていました。その一方で、誘導制御装置は、多様で、ますます複雑なものが開発され、適用されていきました。また、二つの制御原理を組み合わせた、粗いステップでの制御を巻線のタップで実現し、細かい制御は誘導制御装置で実現するものも試みられました。しかしながら、構成はどんどんと複雑となり、誘導制御の技術開発は行き詰まってしまいました。

1894年にはSiemens & Halskeにより、変動する負荷に対して、1次と2次の巻線を分けて、それぞれ接続する形が提案されました。1904年のAEGの特許では、「タップ切換時に、巻線間での短絡を避けるためには電源を遮断する必要がある」という、その後、広く行き渡ることになるタップ切換制御の原理について詳細に書いた論文が含まれていました。この発明によれば、個別の巻線部分間のタップ切換を厳密に電源遮断なく行うためには、異なる変圧器、もしくは少なくとも異なる磁気回路のたくさんの巻線群を使う必要がありました。

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調整変圧器 1929(定格 15,000 kVA、55,000 kVAは少なくとも異なる)

これらの補助変圧器や接触器、電流を阻止するチョークコイルを用いた方法でさえも、これまで以上に複雑で、要求の多いものとなりつつありました。1924年にドレスデンのSachsenwerkによって書かれた特許は、その当時の状況に光明をもたらすものでした。その中では、連続使用を前提に設計されていない転換用の抵抗器が故障により通電され続けた場合、これらの抵抗に発生しやすい損傷が詳細に記述されていました。そして、このような危険を解消する方法が見つからない限りは、危険を伴う負荷時タップ切換器(OLTC)は使わない方が賢明だ、と諦めを漂わせるような結論で結ばれていました。この問題への解決方法として、転換用の抵抗器に熱電対を取り付け、異常な温度に達した場合は信号を発して変圧器を止める、ということが示されていました。どの不具合に対しても誰もその原因を取り除けないため、できることは発生する損傷を最小限に抑える方法を見つけることだと考えられていたのです。単純に言えば、ただひとつ足りないものは、変圧器のタップを中断することなく切り替えるのに適した切換器でした。

そして1928年、この問題を解決する最初の特許が、特許番号467560として、Bernhard Jansen博士によって取得、公開されました。この特許では、まさに今日現在も有効である、単一の遮断器を転換用の抵抗器とともに巻線のタップに沿って移動させる方法と、タップ選択開閉器の考え方が提案されていました。加えて、Jansen博士は1926年7月13日に最初に申請され、1929年4月6日に公開となった、もう一つの特許が特許番号474613として認められました。この特許は、副接触器をもった二つの遮断器が反対方向に動く構造により、中断のないタップ切換を実現するものでした。この画期的な特許は、この問題に対してさらなる説明が全く必要ないほど詳細に書かれており、今日に至るまで、世界中で作られている全ての抵抗タイプの高速タップ切換器の基本原理であり続けています。1930年5月21日、Jansen博士は特許番号496564の特許にて、駆動軸の動きによってエネルギーを蓄え、起動をしたら短い時間で止まらず切換開閉器の全ての動作が確実に行われるようにする蓄勢機構を初めて考案しました。これもまた先見の明のある発明で現在に至るまで主要な基本原理であり続けており、世界中で作られている負荷時タップ切換開閉器の殆ど全てで用いられています。結果として、OLTCを構成する全ての機能は1930年から知られており、今日に至るまで、基本的に変わっていません。

Bernhard Jansen博士